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家禽における細菌叢研究の紹介

~こんなことにも細菌叢って関係しているんです~

学術指導担当(ニワトリ) | 東北大学 喜久里基

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次世代シーケンサーの登場により、細菌学・微生物学は大きな飛躍を遂げ、その学問領域は免疫学、栄養学、代謝学、加齢学にも広がっている。腸内細菌叢の重要性は19世紀後半にPasteurが提唱した「動物は無菌では生命を維持することはできない」との腸内細菌有用論に端を発している。畜産学においても、1950年にStockstadおよびJukesによって抗生物質による家畜・家禽の発育促進効果の発見を機に、宿主(動物)に対する腸内細菌の役割が認識されており、畜産と腸内細菌の歴史は意外にも半世紀以上の歴史がある。

家禽が腸内細菌叢から受け取る恩恵は、他の動物と同様に「有用物質の産生」と「有害菌の排除」になる。腸内細菌叢は一旦形成されれば比較的安定していると言われているが、昨今の、特にブロイラーにおける大規模、集約化、栄養過多の飼育形態では腸内細菌叢は容易に崩れやすい。ニワトリの腸内細菌(叢)の研究は広く研究されているものの、未だ分かっていないことは多い。有害菌による悪影響を軽減するため、種々の抗菌性成長促進物質が使用されているが、“成長促進”というアウトプットが得られる一方で、その作用機序は同一なのか否かがようやく分かり始めた。また、古くから、ブロイラーでは雌雄で成長に違いがあるが、それに腸内細菌叢の違いが関与することが最近報告されている。

生産成績向上に関連したプロバイオティクス、プレバイオティクスなどの効能検証や暑熱ストレスや過密飼育時の腸内細菌叢に関する研究報告は枚挙に暇がない。このような報告の紹介もさることながら、飼育ケージや飼育時期、つつき等における腸内細菌(叢)に関する研究報告も出始めている。

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